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公務員辞めちゃいました。

公務員辞めちゃいました。

橋場 栞 

公務員の仕事を8ヵ月で辞め、現在インテリアショップで働く橋場栞さんにインタビューしました。若いうちから多くの転職で様々な働き方を経験し、自分にあった働き方を考えるうえで何が大切なのかを伺いました。ハッピーベースで生きていくための哲学は「自分の気持ちの違和感に耳を傾ける」

高校時代

Q.高校生の頃はどんな高校生でしたか?

部活をして、アルバイトして、遊んで勉強して、という普通の生活をしていました。

Q.部活もアルバイトもしていたのですか?

そうです。部活はバトミントン部に入って週5日練習していました。アルバイトは周2・3日のペースで部活の後に会席料理屋さんでやっていました。

Q.結構ハードですね。

そうですね。肉体的には大変でしたが、好きでやっていました。買い物が好きで、自分のほしいものは自分で働いたお金で買いたいという経済的な自立芯が強くて。当時から働くことが好きでした。

Q.高校が嫌だなあとかすごく悩んだこととかってありましたか?

ありましたね。入学して3ヶ月経った頃、夏ぐらいに「高校辞めたいな」って思うようになりました。

Q.どうしてですか?

中学生の時に思い描いていた高校生活と実際の生活とのギャップを感じていて思ったより楽しくなかったからです。元々留学に挑戦してみたかったし、英語が勉強したくて国際科に進んだのに、そこの授業がいわゆる「日本人の英語の勉強」というかしっくりくるものではなかったですね。英語の授業に退屈していました。

Q.英語をすごく勉強したかったってことなのですか?

そうですが、それがそっくりそのまま高校を辞めたかった理由に直結するわけではないです。結局辞めたかった理由はライフスタイル的な理由だったと思います。人間関係も特に問題はなかったですが、何か物足りないと思いました。何が物足りないかとかは分からなかったんですが、もっと楽しい何かが欲しかったのだと思います。

Q.それで、高校はやめたのですか?

辞めませんでした。本当は留学したかったのですが、先生や親に「高校を辞める」と言っても相手にされなくて。実際に辞めた後具体的にどうするのかという明確な答えを見つけられなかったので、結局続けました。

Q.続けるという決断をした頃やその後はどのような感じでしたか?

1年の9月ごろには続けようと決断しました。その後は当初よりも友人関係もどんどん親密になっていって強く「辞めたい」と思うことはなくなりました。

Q.高校を辞める、辞めない問題が高校生の橋場さんにとっては最大の悩みでしたか?

それは進路選択でした。やりたいことがたくさんあって高校2年あたりから悩んでいましたね。

Q.進路の決め手は何だったのですか?

先生に「今の成績なら国公立大に推薦で受験できるよ」という一つの可能性を示してもらえたことですかね。その先生はいくつかの候補校を出してくださって、どこを受験するかはインターネットを使って調べて、実際に赴いて決めました。

Q.先生から提案された学校の中から行きたい大学はどのように選びましたか?

自分が色々なことに興味があるタイプということはわかっていたので「色々なことを勉強できる場所に行こう」とは思っていました。

大学時代

Q.大学生活はどうでしたか?

バイトして、勉強して、たまに友達と遊ぶといった具合の平凡な生活をしていた気がします。結局大学生活でも「自分が送りたい生活」像とはまたちょっと異なる生活をしていて何か物足りないと思っていました。

Q.具体的には?

授業がつまらなかったです。自分が興味ある分野の授業を選んでも堅苦しすぎることや、専門的すぎて、取り組みづらくてつまらないと感じていました。

Q.何かすごく悩んだことはありましたか?

進路についてですね。職種や働く場所についても悩んでしました。

Q.悩んでどうされたのですか?

私の大学は資格を取れる大学ではなかったので、まず何かの資格を取るところから始めてみようと思い、保育士の資格の勉強をしましたが、専門の勉強をしているわけではない自分に疑問を抱いて途中で心変わりしてしまいました。

Q.その後はどうされたのですか?

ウェディング関係に興味を持った時期があって、その系統のアルバイトをしたりもしました。インターンシップ等はしていませんでしたが、相変わらず色々なものに興味があったので、興味のある仕事を実際にやってみることで考えるようにしていました。

Q.その時将来のビジョンはありましたか?

高校生の時よりビジョンはなかったと思います。より社会人に近くなったからか、あまり「夢」を抱かなくなってしまいました。友人と進路の話をしても現実的で先生や銀行員など安定した職業を目指す友人ばかりでした。

Q.そういった環境で生活していく中で、最終的にどう進路を決定されたのですか?

3年の6月頃に「公務員講座」があることを知って。明確なビジョンも公務員になりたいという強い気持ちもありませんでしたが、とりあえず受けたら「公務員になれるのではないか」という感覚で受けました。

Q.とりあえず受けてみたって感じですか?

そうですね。当時は就活で強みになるような「資格がない」ことが結構怖かったのだと思います。それと、教育にも少し興味があったので、公務員になれば何かできるのではないかという様な期待を持っていました。

Q.公務員試験の他に就職活動はしていましたか?

していませんでした。一度にたくさんのことはできないので公務員試験に集中しないと逆に落ちると思っていました。当時は試験勉強でいっぱいいっぱいでしたね。第一志望の市役所は最終面接で落ちましたが、その頃はこだわりもほぼなくなっていたので、他の試験で受かった市役所に就職しました。

就職

Q.仕事を始めてどうでしたか?

仕事に対して持っていたイメージとのギャップがありました。「市民の人達と触れ合って生き生きと仕事している自分」というイメージがありましたが、実際はひたすら文章をチェックするお仕事ばかりの総務課で人と関わることはあまりなかったです。つまらないし、面白みも感じなくて「社会ってこんなもんなんだな」ってちょっとがっかりしていました。

Q.学生時代と比べてどうでしたか?

学生時代はほぼバイト生活でしたが、その時の方が楽しかったですね。結局公務員の仕事は8ヵ月で辞めました。

Q.辞めちゃったのですか?

はい。でもその時期に辞める同期なんていなかったですし、離職する前は先々の安定などもあって、「もったいない」という声が多かったです。

Q.決め手は何だったのですか?

職場の同期や学生時代の同級生と自分を比べて、自分の時間がもったいなく感じられたことですかね。周囲の人達の自分より頑張っている姿を見たり聞いたりして悔しさが湧いてきていました。

Q.安定を捨てるのって容易じゃない気がしますが・・・

悩みましたね。安定を捨てることもそうですし、周りの環境も良かったので離れるのは辛かったです。でも負の気持ちで自分が死んでいました。安定を捨てるのは簡単ではないですが。当時の自分は見極めが早くて10月頃には転職活動を始めていました。

Q.公務員時代の反省点はありますか?

言われたことをこなすだけではなくて、もっと自分から発信してみても良かったのかなと思います。1年目でそういうチャンスがあったかは分からないですけど、自分は発信すらしていなかったので。

転職

Q.転職されて何を始めたのですか?

資格はなかったのですが、インテリアコーディネーターの仕事をしました。その時受けたハウスメーカーでは働きながら勉強すればいいよと言っていただいたので挑戦しました。

Q.実際に働いてみてどうでしたか?

「家」「人とのふれあい」「国際的(輸入住宅の取り扱い)」という自分が好きなものを組み合わせた仕事ができるので楽しかったです。とはいえ、専門的な職業で知識や数字も必要だったので、大変だったし苦痛でした。でも、公務員の時より専門的な世界を見ることができましたし、自分が携わって家が建つという形になる楽しさはありました。

Q.資格は取りましたか?

取りませんでした。自分の担当物件を受け持つようになってから、資格の勉強を本格的に始めた方がいいと思った時に、自分がこの資格の勉強する必要性を考えたのです。

Q.必要性ですか?

はい。今後のライフスタイルを考えた時、早く結婚や子育てもしたいけどこの仕事じゃ残業が多すぎて「この働き方を続けている自分」のイメージができませんでした。専門性のある仕事につくということは他の仕事に行きづらくなるリスクを秘めていることは危惧していて、今後のキャリアプランを考えた時、方向転換するなら早めがいいだろうと思って半年でここも辞めました。

Q.転職を決めてからはどうされたのですか?

ちょうど転職を考えだした時に地元の友人に社長を紹介してもらって仕事に対する相談に乗ってもらいました。24歳で3回目の転職をしようとする自分に「最終的にどうなりたいのかという目標設定をして、そのために今やることを決めなければいけないよ」と人生のストーリーの重要性を教えていただきました。

Q.その時目標設定はできましたか?

学生の時から教育関係の仕事がしたいなと思いながらも具体的にどうすればいいのか分からなくて目標設定すらできませんでした。でも、だからどこでも通用するような基礎的な力は見につけておきたいと思いました。その時その方がたまたま起業して一緒に働く仲間を募集しているタイミングで、奇跡的にお声がけいただけて入社しました。

Q.どういうお仕事だったのですか?

「婚活支援サービス」でした。お話を聞いた時、凄く素敵だと思ったと同時に社会的に意義があると思いました。創業メンバーも優秀な方が集まっている中で、何か仕事をするなら社会的に意義のあることをしたい、ベンチャーで一から修行を積んでみようと覚悟を決めました。

Q.主な仕事は何だったのですか?

メンバーが全部で10人ぐらいだったのですが、最初は全員で営業をかけるところから始めました。徐々に私は総務・経理・広報の3つの担当になりました。当時は会社のやろうとしていることへの共感と、何かを1から立ち上げることへの興味が自分を動かしていましたね。

Q.働いてみてどうでしたか?

前例もなく、0から1を作り上げるので軌道にのるまで試行錯誤の日々でなかなか大変でした。営業ということもあり、休みの日や仕事後色々な交流会に参加し、たくさんの人に出会いました。その時やっぱり自分は人に会うのが好きだし、動き回るのが好きだと感じました。

Q.たくさんの人との出会いで変わったことはありますか?

やっぱり生き生きと働いている人や人生を楽しんでいる人との出会いは自分の生き方を考えるきっかけにはなりました。本当に自分にとって大切なことや理想のライフスタイルや、自分らしくいることで何かできるのではないかって。

Q.ベンチャーではそういう働き方はできましたか?

役職上デスクワークが中心の生活になっていて、また公務員の時みたいに自分が死んでいきました。プライベートと仕事をしている時のギャップに自分自身が耐えられなくなるというか。自分と向き合った結果、その会社を辞めることを決めました。

Q.ベンチャーを辞めるときってどういう感じなのですか?

私、すごく転職が多いので、「この先どうするの?」って言われることも多かったです。また、ベンチャーは立ち上げのときが大事なことや、同じ想いで汗をかいて走ることの大切さは分かっていましたが、自分が違う方向を向き出した途端に、そんな自分に嘘がつきながら働くのは逆に辛くて。お互いにとって良くないと思いました。

Q.同じ職場の方は転職について応援してくれたのですか?

最終的に背中を押してくれました。優秀な方に囲まれていた分、考え方や仕事のやり方など本当に勉強になりました。

Q.3度目の転職で不安はありませんでしたか?

もちろん、公務員、ハウスメーカーも辞めて、ここも辞めて・・どれもろくに続けてない履歴書を持ってどこが拾ってくれるのだろうという不安もありました。辞める勇気は持っていましたが、どこか世間の目も気にしていて。でもこうやって色々なことにチャレンジできるのも20代くらいだろうと思いました。

Q.現在はインテリアのお仕事ですよね。楽しいですか?

はい、今までの中では一番楽しいなと思っています。と言いつつ、楽しいという表現が正しいかはわからないですけど、一番自分らしく働けているなと思っています。「こうしたい」という希望を言えて、形にしていけるような「自分の希望に沿って動けている自分がいる」という自覚がある感じです。いま8ヶ月目くらいなので、ほぼ最長記録です。

Q.何が楽しいと思える理由なのですか?

そうですね。雑貨や海外のデザイン、人など・・自分の大好きなものに触れられるっていうのと、あとは仕事のスピード感が自分に合っていて良いなって思っています。どうすればもっとお客様が喜ぶかとかお店がよくなるとか・・・瞬間瞬間で、自分で考えたりチームで動いたりして、どれだけハッピーを生み出すかということにやりがいを感じるので。

伝えたいこと

Q.今までの人生でいま思えばもっとこうしておけばよかったな?って思うことはありますか?

ありますね。もっと視野を広げていろいろなことしておけばよかったかなって思います。例えば留学とか。やりたいなと思っている気持ちがあっても「金銭的に厳しそう」って思ってすぐ諦めていました。留学して特別やりたいことがあるわけじゃないですが、もっともっと広い世界を見てみたいなっていう気持ちがあります。

Q.そういう部分では橋場さんは“たくさんの人との関わり”も視野を広げるツールなのでしょうか?

そうですね。大学時代都内に出て色々な人と出会って、話してみたかったですね。田舎でしたし、そういうチャンスはなかったですが。

Q.大学には行った方がいいと思いますか?

行った方がいいと思います!行きたくないなら行く必要もないと思いますが、でも、行くだけで色々な人と出会うことができるので。

Q.どういった風に大学を選べばいいと思いますか?

自分にとっての興味のあるものをベースにすることや、「どのような環境に自分の身を置くことになるのか」という想像で選ぶことです。私にとっては「どういった人と出会えるのか」という「人」で選んでいました。ただ、大学自体も行ってみないとわからないものなので、あとは実際に行っている人の話を聞いてみたりすると良いかもしれません。

Q.学生時代に、やりたいことって決まっていた方がいいと思いますか?

私自身なかったので、なくてもいいと思います.

Q.ちなみにいまは、自身のやりたいことってクリアですか?

社会人になって自分自身に向き合い、「自分が何をしたいのか」について考えたり、色々な人と会って話をしているうちに、色々な可能性を知ることができたりして、徐々にクリアになってきました。

Q.社会人になって、人生って楽しいですか?学生時代と比べてどうですか?

大学時代も、まあまあ楽しかったのですが、いまの方が楽しく感じていますね。仕事を通してなのかもしれないのですが、それでもやっぱりたくさんの人に会うことができているので。今、楽しいです!

Q.これまでを振り返って、その当時は辛かったけど、いま思うとやってみてよかったな、ということはありますか?

転職ですね。本当に、何回もしましたが、どれも「やってよかったな」と思っています。「この人は仕事が続かないのではないか?」って思われるリスクもありますが。振り返ってみると、右往左往しているようにも見えますが、どれも何かしらの点で繋がっていました。

Q.繋がっていたのですか?

例えばインテリアコーディネーター時代に使っていたデザインのスキルが、ベンチャーの広報の仕事に応用することができること等。必ずしも「その仕事がしたい!」という訳ではなかったのですが、どこかで役に立っていくのだなって思いました。

Q.これから、進路を選択する高校生や大学生、または転職を考えている社会人に向けてなのですが、橋場さん自身が何かを選択する際に、大事にしていることはなんですか?

「自分の気持ちに正直に」ですね。今でこそだいぶ、徐々に自分も「素直になれてきているな」とは思います。私は違和感や選択をしなくてはいけない局面を意識し始めてから、だいたい1ヶ月くらい悩みます。そして、いざ選択をする際に違和感を感じる自分の気持ちと、それによって生じる様々な不安を天秤にかけて、自分のハッピー度に最終的に従うようにしています。

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