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世のため人のため、巡り巡って自分のため

世のため人のため、巡り巡って自分のため

内田 桂太

病院の医療事務として、日々様々な業務に携わっていらっしゃる内田さんにインタビューをしました。女性が多い職場の中で、男性職員として心がけていらっしゃることや、内田さんのお婆さんから授かった大切な教えなどについて伺いました。そんな内田さんの持っていらっしゃる哲学は、「人のためになることは、できるだけ相手の気持ちをよく考えて行動する」。

<高校時代>

 Q.高校生の時はどんな高校生でしたか?

硬式テニス部に入っていました。学校と部活というサイクルでしたね。高2からは、予備校にも通っていました。当時漠然と大学には入りたいという気持ちがあったのと、小学校の先生になりたいとも思っていたんです。先生になるには大学に通わなきゃいけないので。 

Q.大学に入ろうと思った時は、誰かに相談しましたか? 

親に相談しました。「小学校の先生は良いんじゃない?」と勧めてくれたので、「じゃあやってみようかな」と。そこでだいたい進路が決まりましたね。大学に入って先生になれれば良いなという感じでした。

Q.どうして先生になろうとおもったんですか?

本当に漠然とでした。子どもが好きでしたし、今思うと両親や、親戚に向いてると言われてその気になっていたのかもしれませんね。(笑)

Q.高校の時の人間関係はどうでしたか? 

結構内気で、人見知りも激しかった。仲の良い子達とよく話しているような、おとなしい感じでした。集合写真とかは遠慮して端っこに写っていましたね。前に前にって感じではなく、控えめな男の子でした。(笑) 

Q.高校で嫌なことはありましたか?

人を嫌いになることはなく、もともと騒がしいところには入りづらかったので、勉強は真面目にやっていました。先輩ともあまり交流はなくて、ギスギスした人間関係は無かったかな。「ザ・安定」でしたね。 

Q.高校生の時、生き方のビジョンはありましたか?

お婆ちゃんみたいになれれば良いなと思っていましたが、具体的なビジョンはありませんでした。

 Q.お婆さんはどのような方だったんですか?

いつも明るく、話すのが大好きで、誰とでも仲良くなれちゃう社交的で元気なお婆ちゃんです。何といっても、人生を楽しんでるように見えたのが一番でしたね。お婆ちゃんと話してると元気を貰えますし、自分の悩みなんかちっちゃいなと感じるほど前向きになります。 

大学・就活

 Q.大学に進んだ後はどうでしたか? 

小学校教員の免許が取れるところを受験したのですが、現役の頃に全滅して、一浪してまた受けてもダメだったんです。だけど親にこれ以上迷惑をかけたくなかったので、滑り止めの大学に入りました。でも、そこで先生になるのは諦めてしまいました。 

Q.大学生活はどんな感じでしたか?

学校が家から1〜2時間かかるところだったので、遊ぶことはあまりなく、学校から帰ってきて病院のバイトに行くことが多かったです。あとは、大学で仲良くなった子と遊んでいるような生活でした。

Q.人間関係はどうでしたか? 

大学の同じクラスに予備校が同じだった子がいたのですが、その子はやんちゃな子だったんです。その子たちに何故か目をつけられちゃったんですよね。卒業の時は仲良くなったけど、そこをなんとかできていたら、もっと楽しめた気がします。 

Q.目をつけられたって、どんな感じなんですか?

別に何かをしてくる訳でも無いのですが、お互いに煙たがってる感じですかね。僕もある意味目をつけて避けていたのかもしれないですね。やんちゃな人達がワイワイしてるのが羨ましかったのかも知れないです。こっちは必死で頑張ってるのに、なんでチャラチャラしてるんだって思ってたんだと思います。

Q.その後、どうしましたか? 

「悩んでいても仕方がないし、苦労して仲良くなる必要もない」と思い、テニスの授業で知り合った子や、自分がいやすい所の人たちと仲良くなれればいいと切り替えていました。語学研修に行って、大学の先生とも仲良くなりました。北京の学生と交流したり、観光したり、中国の遊びをやったりもしました。

Q.お母さんのご紹介で、病院でのバイトを始められたとか?

はい。母親はもともとそこの病院で働いていたんです。バイトを探していた時に、その母親から「事務当直のバイトを探しているよ」って話があって、興味範囲で入ったのがきっかけです。結局4年間そこでバイトを続けました。

Q.バイトは好きでしたか?

好きでした。病院の当直事務は1人しかいないので、全て自分で考えなきゃならないと言う状況でやりがいはありました。

Q.大学生の頃にビジョンはありましたか?

「人の役に立つことをしたい」、「お婆ちゃんの言うことを実現したい」とはずっと思っていました。でも、本当に自分がやりたいことは就職する時までずっと分からなかったです。自分に何が向いているのかについても、具体的な方向性が分からなくてずっと悩んでいたと思います。

Q.就職先はどのようにして決めましたか?

「こういう仕事に就いたら、こんな風になるだろうな」と妄想しながら就職先を考えたと思います。特にやりたいことも具体的には無かったし、業種を見ながらやりたいことを見つけていきました。人事の人と話して、自分がイメージできる所を探していきました。

Q.誰かに相談しましたか?

高校の時の友達に相談しました。1浪していたので、社会人になっている友達にエントリーシートの添削をしてもらったり、相談にも乗ってもらいました。人に恵まれていたんです。

Q.エントリーシートを出されたということですよね。どうだったんですか?

当時はやりたいことがよく分かっていなかったから、色んな業種にエントリーシートを出して、4社くらいから内定をもらいました。

Q.その後はどうされましたか?

就活の結果、最終的に人材派遣会社に決まったのですが、ふと、「病院で1人採る予定はないのかな?」と閃いたんです。そこで、バイトでお世話になっていた上司に電話して聞いてみたら、3日後くらいに「内田なら採ってもいいかも。でも、入るか否かを1週間以内に決めてくれ」と言われたんです。

Q.悩みましたか?

人材派遣会社に行くか、病院に行くかということで、最初は社会貢献できる会社がいいなと思っていました。でも病院は、街に一つの大きな病院なので、地域住民のみなさまにとって「医療」として社会貢献できると思いました。

Q.医療での社会貢献に興味を持ったんですね。

はい。それに、神社が経営している病院なので潰れることはないだろうとも思い、親とも相談して病院に就職することを決めました。病院でのバイトを4年間やっていたおかげで人間関係もできていたので、うまくやっていけるかもしれないと思ったし、知っている人たちと働けるのもいいのかなと思ったんです。

Q.学生の時から医療事務のお仕事をしたかったのですか?

就活をきっかけに、医療事務の仕事に就こうと思ったんです。「世のため人のため、巡り巡って自分のために働くのよ」という、お婆ちゃんの言葉が忘れられなかったんです。自分がそういう風に働けるところがいいなと思っていました。

現在

Q.改めて、今どんなお仕事をされていますか?

週6日、地元の病院の医療事務の仕事をしています。まず患者さんが来た時に受付をして身体の症状を聞き、何科で受診してもらうのかを割り振りします。それから、診察が終わった後の会計もやります。

Q.一言に「事務」といっても、様々なことをするんですね!

はい。他にも、入院病棟の事務や、病院の物品の請求や業者への値段交渉、選挙の時には患者さんが病室で投票できるように設備を整えたりもします。さらに、防災訓練などの企画・運営や、男性職員が少ないから雑務をやったり、患者さんの送迎もしています。

Q.勤務形態はどのような感じですか?

月曜〜金曜は1日中仕事。土曜は半日だけ診察があるのでお昼まで仕事です。その中で月に4、5回は当直もあります。土曜日の午後と日曜日はお休み。仕事以外は、特に予定がなければ日曜の早朝に走ったり、ロードバイクの朝練をしてから1日が始まります。

Q.夢や安定については、どのように考えましたか?

病院に就職した時は、とにかく仕事を早く身につけることしか考えていなかったです。男性職員が入るのが10年ぶりだったのでプレッシャーを感じ、また女性陣の中でうまくやっていくことで手一杯だったので、そこまで夢については見いだせていなかったと思います。

Q.そういう部分でプレッシャーがあるんですね・・・。

バイトと仕事は全然違って、最初の3年間は大変でした。女性社会の中に男が入るのは結構大変なことがいっぱいあって、上手くやっていくために自分なりに模索しながらやっていました。

Q.具体的に、女性社会の中に入るとどのようなことが大変だったのでしょうか?

女性同士の人間関係も目の当たりにするので、その中で男がどう関わっていくのかは悩みます。一番は気にしないのがいいんだけど。(笑)また、僕は社員だけど、女性はほとんどがパートさんなんです。

Q.そうなんですね!

なので仕事を振る上で、自分よりもキャリアがある人に仕事を振るようなときもあります。そんな時は、言葉遣いなどに細心の注意を払ってやっていく必要があります。

Q.今のお仕事を通して、今後何かやりたいと思っていることはありますか?

町内にはいろんな病院がありますが、お互いにもっと関わりを持っていければいいなと思うんですよね。もっと関わっていけば、地域医療としては発展していけるんじゃないかと思っているんです。でも、そういうことは病院の医師同士が動かないと中々動けない所もあるので、なんとかしたいと思っています。

Q.そのために、どんなことから手をつけようと思っていますか?

人間関係を円滑に進めるような環境にできれば良いと思っています。まずは自分の部署から、コミュニケーションをもっと取るようにして、仕事以外の所でもっと関わりをもつようにしていきたいと思っています。仕事の場では、査定と返戻をもっと無くしたいと思っています。

今だから思うこと・これからのこと・伝えたいこと

Q.学生時代は楽しかったですか?

高校・大学は楽しかったです。今思えば、もっと楽しめたのではないかと思います。高校生の時はもっと色んな人と話したり、大学生になってからはもっとバイトしたり、海外にもっと行ったり・・・。後悔じゃないけど、やっておけばもっと楽しめたんじゃないかということがあります。

Q.大学は行ったほうが良いと思いますか?

あまりそうは思いません。具体的なやりたいことがあるなら、専門学校などに行けばいいし、大学に入ることが全てではないです。大学を出ていなくても、すごく活躍している人たちはいっぱいいるし、必ずしも大学に入る必要は無いと思います。

Q.何故学校では勉強しているんだと思いますか?

「社会人になって、恥をかかないようにするため」かな。社会に出て使わないこともあるけど、ちゃんとした大人として生きていくために必要なことなんじゃないかなって思います。

Q.やりたいことは最初から決まっていたほうがいいと思いますか?

そうは思わないですね。決まっていればいいとは思うけど、無いなら無いで、色んな経験をしながら、その中で決まっていけばいいと思います。

Q.社会人になって、人生は楽しいですか?

楽しいです。仕事は仕事でいいけど、仕事以外の所でも様々な人と関わることができて、本当に楽しいです!

Q.学生時代と今ではどちらが楽しいですか?

今のほうが楽しいですね。学生の頃より、経験できることがたくさんある気がします。トライアスロンを始めたり、やっとこの歳になって親と旅行に行ってみたり、同時に親孝行について考えられるようになったり、一人暮らし始めたり…今までに無かったような事がいっぱいあって、楽しいです!

Q.当時は辛くても、今になっては良かったと思えることってありますか?

1人で当直のバイトをしていたときに、自分だけで対応を決めなければいけなかったことがあります。そのとき、「失敗しないためにはどうするか」について考えたんです。そういう経験が、トラブルがあった時に対処法について考えられるようになるきっかけとなったんです。

Q.どのようなトラブルがあるんですか?

今となっては普通の事なのですが、病院には色んな症状の人がいらっしゃるので、当院では診察するのが難しい患者様が突然駆け込みで来られたりすることもあります。バイトしていた当時の僕はテンパってしまう事が多く、最初は看護師さんや先生に助けてもらってばかりでした。

Q.トラブルに対処するときに大切なことは何ですか?

いかに冷静になって対応できるかだと思います。冷静になって相手の話を聞いたり、自分には何ができるかを考える余裕が持てるようになれれば、色んな患者さんの対応ができるようになりましたし、それは今の仕事でも役にたっていると思います。

Q.進路選択時に、得意なことなどは活かしたほうがいいと思いますか?

それは活かしたほうがいいと思います。

Q.好きなことなどがわからない時は、どういう風にしてそれを見つけたらいいと思いますか?

とりあえずやってみる!頭で考えていても、やってみないとわからないからね。トライアスロンも、とりあえずまずはやってみてから「楽しい」と感じたのですが、やはりやってみないと世界もわからないし、自分に向いているのか、いないのか、また続けられるのかもわかりません。

Q.内田さんにとって、「仕事」とはなんですか?

生活していく上で必要なことではあるけど、自分を高めることでもあって、社会貢献できる事だと思います。

Q.自分が大切にしていることは何ですか?

「人のためになることは、できるだけ相手の気持ちをよく考えて行動する」ことは大切にしています。自分のことよりも、まずは相手のことを考えて行動するように心がけています。

Q.転職については考えていますか?

してみたいなとは思います。今の仕事は好きだけど、「この仕事だけで人生終わるのはどうなのかな」と思うんです。他に、自分に向いている仕事があるかもしれないですし。でも、なかなか一歩が踏み出せないこともあるのですが。

Q.これから進路を選択しようとしている人たちに、何か伝えたいことがあればお願いします。

色んな人と出会って欲しいです。色んなバイトをしてほしい。できることなら、海外にも行って欲しい。いかに日本が好きかを実感できるし、習慣の違いを目の当たりにできます。

Q.ありがとうございます。他にはありますか?

あと、社会人になっても、やりたい気持ちがあれば何でもやれると思います。その仕事に就いたからと言って、その仕事をずっとやらなければいけない訳ではないし、やりたいと思ったことをやった方が良いと思います。人を信じるよりも、自分を信じた方が良い。

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